2012/02/12

フレームセンター 額装のココロ

お世話になっております。
フレームセンターのスギャマシンヤです。
最近「綾鷹」率がやたらと高いです。なかなか美味しいですよね。
別に利き茶なんてできませんが。

先日の閉店間際のことです。
以前、超大型の額装のお仕事をいただいたEさんがお見えになりました。
Eさんは錦でお店を持たれている、マスター(オーナー)です。
なんでもお店のお客様にワインボトルをぺちゃんこにしてしまったオブジェと言うか、
オーナメントをいただいたから、それを額装してほしい。と。
で、明日そのプレゼントをしてくれた方が来店されるから
明日の夜に間に合わせてほしいと言うのです。

それはちょっと重量感のある、
本物のワインボトルをぺちゃんこにしてしまったお土産のようなものでした。
閉店間際ですから、本来なら額装は次の日に行うところですが、
次の日が僕はお休みだったのです。
僕はEさんに伝えました。僕は明日お休みなので、今日中に額装をして帰るので、
明日は早い時間からお渡しできますよ、と。
もちろん僕としてはサービスのつもりで、夕方まで待たせずに、
明日の早い時間から渡せると伝えたつもりだったのですが、
Eさんは、ならそれは今日のうちに出来るということだね、
それなら出来たらお店に届けてほしい。ご馳走するよ、とクスクスと笑うのです。

僕は困りました。本来こういった変わり種の額装は、
あまり急ぎでは受けたくない部類の仕事です。結果単純な額装になったとしても、
少し時間をおいて、いろいろと額装方法を考えたいところなのです。
うかつに急ぎで受けてしまって、
額装に不都合な部分を見落としてしまう可能性があるのです。
しかし、状況も状況です。
Eさんのそのプレゼントをさりげなく額装して店内に飾り、
そのお客様を迎えたいというお洒落ないたずらゴコロを
実らせてあげたいのもやまやまです。
僕はそういう場合、わりと出たとこ勝負です。


少し遅くなりますが、持っていきます。

大丈夫、うちは1時過ぎまではやってるから。


‥ちなみに僕の基本的タイムリミットは11時半です。終バスの時間です。

急いで額装を始めました。案の定オーナメントが『ブ厚い!』という致命的な
トラブルを発見しましたが、なんとかせっせと継ぎ足し部材を付けて対処しました。
当初、2時間でカタをつけるつもりでしたが、しっかり3時間かかりました。
だから、ブログを更新できなかったのです。

さて、現在の店内の在庫にあるもので一番いいかなと思う物を選んだので、
必ずしもオールタイムでのベストではないのかもしれませんが、
なんとか出来上がりました。
下地のスウェードもやや照明落とし気味の店内を考え、あえて軽い色を選びました。



Eさんのお店ははっきり言ってかなり品がいいです。
常にピアニストが入っていて、その日はバイオリンのお姉さんも入ってました。
お客さんは老紳士(経営者然)一人だけでしたが、
そのまわりに「きれいどころ」が囲んでました。
「きれいどころ」を狩人の眼でジロジロ見たい欲求が強くありましたが、
僕もEさんというお客様を失いたくないので、
グッと我慢してカウンターに「お呼ばれ」しました。

何から?と聞かれ僕はビールをお願いしますと。
隣にはママさんが付いてくれました。
百人中、百人うなずく、倍賞千恵子似の美人様です。

確かに『ご馳走するよ、クスクス。』はありましたが、
僕も分別のあるよう、心掛けている成人です。
まったくの「ご馳走」に甘えるわけにはいきません。

Eさんはおもむろに「お品書き」を見せ、
何でも選んで食べてと言いました。
ちなみに僕の財布には全財産の5千円札1枚。
(その金額の中にはいくらかの借りている分が入ってます!)
僕はほとんど身動きがとれなくなり、お品書きの字さえ読めなくなってきていました。
出てくる言葉もウーとか、アーです。
ママは僕の動揺を察したか、遠慮しないでいいですよ。と。
しかし、僕も分別のある大人を!分別のある大人を!ウー、アー‥。

微妙な一瞬が流れました。(僕にとってはかなり長い体感時間ではありましたが。)
杉山さんお腹は減ってないの?もう遅い時間だよ。とEさん。
だってしょうがいないでしょ、今日欲しいって言うんだから!
とはまったく言えません。実際、僕はわりと空腹に強い、脂肪を持つ男。
いえ、それなりに減っています。と。
なら、お腹にたまるもの食べなさいよ。と。
お品書きの最後の方には何種類かの主食系が。
端から手前4つ目に「ラーメン」とある‥。
錦の「高級きれいどころ」にラーメン‥?
まさか出前を取るのかな?と思いつつ、ラーメンと言ってしまいました。
はい。ラーメンね。Eさんにっこり。
しばらくしてチーフのバーテンダーさんが、
小ぶりのラーメンを運んで来てくれました。
当店名物のラーメンです。と。おおっ。
スタンダード醤油味の鶏ガラだしのラーメン。
小ぶりなところが、とても上品。お味は名物の名に間違いなしのキメ。
美味しいラーメンですねぇ。と僕。

いただいた後、お酒を替えての歓談タイム。
実は2年前に僕はお店にお呼ばれしたことがありました。
その時のことを、なんとピアニストさんが覚えていてくれたのです。
ちょうどカウンターの端、僕のま近でピアノは演奏されており、
僕はあんなに至近距離でプロの演奏を聴いたことがありませんでした。
音が肌に触るあの記憶。
じわじわと言葉にならない感動。今日ここに来て良かったと。

しかし、ずっと至福の空間に浸っていたいが、僕はタイムリミット11時30分の男。
実際お店にいられたのは50分間くらいです。

僕は分別のある成人を目指す男。
生意気な!思われても、財布を出し、勇気を出し、おいくらですかと訊ねました。

Eさんは一瞬のステップワーク。ササッーと僕の肩を抱きお店の外へ。
今日はどうもありがとうございました。と。にっこり。



海の向こうNFLは先日決勝戦(スーパーボウル)を終え、
以前に僕が優勝を予想したニューイングランド・ペイトリオッツは
惜しくも準優勝でした。
試合の流れはかなり重たい流れで、
優勝したニューヨーク・ジャイアンツのペースだったと言っていいと思いますが、
最後のプレーまで逆転の可能性がありましたから、
接戦だと言っていい試合だったと思います。
僕はここ数年ペイトリオッツを、特にチームの要である
クォーターバックのトム・ブレイディ
(奥さんは年数億円稼ぐと言われるスーパーモデルのジゼル!)
を応援してきたので、この結果はとても残念ですが、
勝負事ですから仕方がありません。勝った方が強いのです。



最近、年配の方の「配慮」をいただくというか、感じることが多いです。
今までも同じ様に接してきていただいたと思うのですが、
その中にある「配慮」に
ようやく少しずつ気付ける年になってきたということでしょうか。

日々勉強。額装のココロ。
皆さまこれからもご指導ご鞭撻よろしくお願いいたします。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

とてもいい話、読ませてもらいました。。深イイ話に投稿してみては。。。
D志舎 ヒマ男

セントラル画材 さんのコメント...

先輩いつもありがとうございます。

なんか、雑誌の巻末の『編集室より』みたいな掛け合いになってますね。


おすぎ。